さて、今週のコラムを担当しますのは加茂駅前校の津村です。
さて、最近の教科書改訂の際にも大きく取り上げられている『SDGs』。私自身も新課程教科書の指導を行うようになったあたりから、英語の文章内容やら社会のコラムページやらで多く見かけるようになりました。ふと、様々な企業でサイトを見ていると、メインページに『SDGsの〇番と〇番に積極的に取り組んでいます!』などと掲げる企業が散見されるようになってきました。
しかしながら、まだまだ世間一般では『SDGs?何ソレ?』といった大人が非常に多いのも確かかと思います(実際、恥ずかしながら私自身が教科書の話になるまで無頓着でした……)。そこで、今回はSDGsについてお話しし、今後、子供たちがどのような考え方をもって社会に出ていく事になるのかを考えていきましょう。
①教科書とSDGs
では早速、現在の教育ではどのようにSDGsを扱っているのか?を実際の教科書や学校での取り組みに合わせて見てみましょう。(木津川市に配布している採択教科書を参照)
小4国語 光村図書
アフガニスタンにて日本から古くなったランドセルを配布する活動をしている方のエッセイ。(4.質の高い教育をみんなに)
日本からアフガニスタンに贈られたランドセルは2004~2021年で24万個程度に上っています。
小5社会 日本文教出版
大阪・奈良:大和川の水質汚濁と改善の流れについて。(6.安全な水とトイレを世界中に 14.海の豊かさを守ろう)
関西の急激な経済成長と共に水質が日本最悪クラスまで悪化した大和川。2004年に観測史上初めて基準値を下回り、2008年以降はずっと基準値を下回っています。現在、川の汚れは最も汚れていた時期から1/9程度にまで減少しており、清流にしか生息しないとされるアユの遡上も確認できるようになりました。
・小6理科 啓林館
環境問題について考えるページ。 (12.つくる責任つかう責任 13.気候変動に具体的な対策を 14.海の豊かさを守ろう 15.陸の豊かさも守ろう) 6年生の最後のため、今までの学習のまとめ的な側面もあります。
小6社会 日本文教出版
SDGsについての紹介。もうここはガッツリとした紹介です。
中1国語 光村図書
義足を付けたアスリートの活躍と義足職人のエッセイ(3.すべての人に健康と福祉を)
近年、義手・義足の技術向上はすさまじく、いずれオリンピックの競技のうちいくつかの記録はパラリンピック選手に抜かれるだろうという予測も出ています。
中3英語 光村図書
海のプラスチックごみについて英語でプレゼンを行う登場人物(14.海の豊かさを守ろう)
川辺に行くと、誰かが捨てた(落とした?)ペットボトルが漂う光景などは残念ながらよく見かけます。しかし、そのペットボトルは最終的に海まで流されてしまい、多くの海洋生物に影響を与えています。
中3公民 東京書籍
西アフリカの伝統織物を用いたアパレル会社社長へのインタビュー(1.貧困をなくそう 8.働き買いも経済成長も 10.人や国の不平等をなくそう)
日本にも多くの伝統文化がありますが、それを様々な製品に加工して人々の手に届くような工夫を行う事で伝統を守る事もSDGsの大きなテーマの1つです。
また、私立校ではこの動きはとても顕著です。2校ほど例を挙げると
同志社女子中学校
人権問題と絡めて各生徒に調べ学習をさせて、PowerPointにまとめて発表する時間を設けています。調査内容は世界の問題から地域の問題まで様々ですが、キリシタン系の学校のため、聖書との関連性を見出させるといった特色もあります。
立命館宇治高等学校
緊急事態宣言下において家庭でもできる学習の一環として、入学してすぐの1年生にSDGsに関するプレゼンを発表させる機会を設けています。クラスメイトとのGmailでの資料のやり取りなどを行いながら協力して発表に向けた準備を行っていました。
と、このように小中高校ではすでに様々な形でSDGsについてや、その考え方を多方面から押さえるような内容を掲載したり・学校内で考える時間を設けられたりしています。
②そもそもSDGsって何?
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月の国連サミットで採択された、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。
このSDGsは前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)をさらに発展させたもので、貧困問題・経済格差問題・環境問題に対しての問題解決を目指すための枠組みです。これまでのこういった国際問題は主体が国や国際機関・NGOが中心となる事が多く、国家方針や宗教的な慣習・企業の思惑などによっては問題解決のための活動が上手く入り込めないといった事態が起こっていました。例えば【4.質の高い教育をみんなに】ではイスラムの原理主義者が『女子には教育など不要!』といって突っ撥ねてしまうことが多々あり、その因果から2014年にはイスラムの女性教育のために尽力したマララ・ユスフザイさんがノーベル平和賞を受賞することになります。
こういった背景から、全世界の全ての人々がこれらの問題に一丸となって取り組むべき事柄をSDGsとしてまとめ上げています。
③今までの国際的な運動との違いは?
ここまでは、ある種今まで求められてきた国際運動と大きく違いがないように感じるかもしれません。しかし、SDGsの大きな特徴は国家だけでなく民間企業(一般人)にも取り組みを求めており、それらが多くの『研究対象』や『ビジネスチャンス』として転がっているという点があります。こちらは実例を2つほど出してみましょう。
Ⅰ.スターバックスコーヒーにおけるSDGsの取り組み
例えば、スターバックスコーヒーでは、「Glocally Responsible」として、SDGsに関わってくるような内容で様々な方針を打ち出して実践を行っている企業になります。実際に最近スタバを利用したことがある人であればピンとくるかと思いますが、飲み物を注文するとストローが紙素材である事に気が付いた人もいるかと思います。これは、日本にてスターバックスが創業された当時から続いている環境への配慮についての取り組みの一つで、持ち帰りの人にはタンブラー持参で20円引きのキャンペーンと同時に容器・ストローなどを再生紙を中心とした物に変えた事で、ゴミを処理するうえでの環境への負荷を圧倒的に軽減しています。
この取り組みに対して、『紙の味が混ざるから嫌だ。』『すぐふにゃふにゃになるのでどうにかしてほしい。』などの声もあるようですが、プラスチックごみと海洋汚染に関する研究を行う専門家は『すぐに溶けるからこそ、プラスチックごみで怪我をするウミガメが減るなどのメリットがある。そういった素材を大企業であるスターバックスが率先して採用する意義は非常に大きい。』として支持する声があります。
また、それ以外にもコーヒー産出国とのフェアトレードや日本各地域の食材を用いた新メニューの販売など、スターバックスコーヒーはSDGsに対しては非常に積極的に取り組んでおり、先進的な物の見方をしていると言えるでしょう。
Ⅱ. 大規模災害時におけるトイレ問題に対する提言(10/22 SDGs AICHI EXPO 2021 講演ステージ NPO法人日本トイレ研究所 加藤 篤 氏の講演より要約)
地震・噴火・風水害など、自然災害はいつ私たちの身に降りかかるか分かりません。そのことは皆さんもよく分かっているかと思いますが、実際にそれを意識した生活を『24時間365日 年中無休』で行っているという人はいないと思います。いつもと同じように食事をとり、のどが渇けば体調管理もかねてしっかりと水分補給を行うでしょう。そんな中、突然襲ってきた大災害。どうにか大きなケガもなく乗り切ることが出来た際に一番最初にぶつかってしまう問題が、『トイレ』です。
実際に、災害前までに『これからも普通の生活が続けられる』という前提で過ごしていたとうこともあってか、阪神淡路大震災・東日本大震災・熊本地震の3つの震災において発生から6時間以内に70%以上の人が、何かしらの排泄を行っています。また、満足にトイレに行けない環境・清潔で安心できるトイレに行けない(不潔・暗い・男女共用)などの状況からトイレに行く事を我慢する人・トイレに行かないようにするために食事・水分補給を控える人が増えてくると、健康に関する2次被害も想定されます。そのため、講演を行っていた加藤 篤 氏の所属するNPO法人日本トイレ研究所は国や地方自治体に対して『災害時にすぐに準備できるようなトイレの整備&避難所への配備』などを呼び掛けているそうです。
~さて、長くなってきたので続きは次回で 次回は11/20投稿予定です。~