こんにちは、加茂駅前校の津村です。
さて、夏休みが始まり早10日ほどが経過しました。教室では連日のように中3が2コマ連続授業を続けており、音を上げそうになりながら頑張ってくれています。まあ、こんな声も講習後半になれば『2コマが普通に思えてきた』と言い始めるワケなんですが(笑)
さて、そんな夏休みですが、すべての学年にとって悩みの種なのが『学校からの宿題』です。今年もそれぞれの学年で『時間があるからこそできる』といった類の宿題がてんこ盛りです。
さて、そんな夏休みの宿題を津村がやったらどうなるのか?という事でこの夏休みに生徒たちの宿題をいくつかやってみようと思います。
(こいつ、長期休暇のたびにこんなんしてるなと思ったあなた。正解です! 過去、こんなことをやっていたり……)
さて、今回は泉川中2年生で出題されたコチラ!
自分の出席番号の元素記号を調べよう!
出席番号によって結構な格差が出そうなこの課題。
出席番号1番(水素:H)や6番(炭素:C)・8番(酸素:O)なんかはすごく書きやすいけど、4番(ベリリウム:Be)・21番(スカンジウム:Sc)・33番(ヒ素:As)あたりの人はなんか気の毒になってくると言いますか……汗
さて、テーマですが例によってこのサイトを見た子が『ラッキー』と言いながら写してしまって、学校の先生のジャマをするのは僕の意図するところではないので、出席番号にならないであろう番号の元素を調べてみたいと思います。
ということで、テーマはこちら!
原子番号43番 幻の元素、テクネチウムです!
①基本情報
テクネチウム 原子番号 43 7族(マンガン族)
原子量(原子の重さ) 98(など) 融点 2157℃ 沸点 4265℃ 密度 11.50g/cm3
②幻と言われた理由
原子番号の前後の元素の発見は42番のモリブデンが1778年・44番のルテニウムが大航海時代のアメリカ大陸で利用されていた(分類が明確化したのは19世紀初頭)のに対して、テクネチウムの発見は20世紀になってからもしばらく発見されず、なぜか天然に存在しない元素として100年以上科学者たちが発見に向けた努力を重ねた事から、いつしか『幻の元素』と呼ばれるようになっていました。
その後、どれだけ探しても見つからない事から、イオン化した原子を加速して原子にぶつける装置『サイクロトロン』が発明された1936年に原子番号42番のモリブデンに重水素(とても雑に説明すると少し重めの水素)をぶつけることで人工的に作成。結果として世界初の人工元素として誕生することになりました。
そうして、ギリシャ語の「人工」であるテクニトスという言葉より名を拝借して、『テクネチウム』と命名さえれることになりました。
なお、この時作成と発見に関わったローレンス博士とセグレ博士は、この後、(他の功績も含めて)ノーベル物理学賞を受賞しています。
【写真】ローレンス博士とセグレ博士(Wikipediaより拝借)
その後、この元素はウランの核分裂後に稀に発見されることや宇宙の彼方にある赤色巨星(太陽のような恒星が水素を使い果たした後になるより大きな恒星)の中に存在することが観測され、一応天然からも採取できることは説明されました。
③何に使われている?
さて、この人工的に作成されたテクネチウムは他の人工元素シリーズと同じく放射能を備えています。しかし、放射性物質としては結構特殊な立ち位置(細かいことは大学以上レベルなので解説はキツイです汗)にいるため、
(1)物理学的半減期が6.02時間と短い。(3日もすれば0.025%まで減少する) (2)γ線のみを放出する。 (3)放出γ線のエネルギーが141keVであるため、精度よく測定でき、被検者の被ばく線量が少ない。 (4)安く作れる。
という、放射性物質としてはかなり安全&リーズナブルな代物なので、各地の医療機関で核医学検査界隈では頻繁に使われています。(冒頭の写真はこの医療用のテクネチウムのイメージ写真です)
その有用性は、2011年の原発事故以降でたびたび話題に上がる『原子力委員会』でも、2022年に『自分で作れた方がいいんじゃない?』と提言書をまとめるほどです。(なお、現在はほとんどが輸入に頼っている状態だそうです)
④まとめ
・本来、中学校理科では『原子は化学変化によって新たに変化することが出来ない』とされているが、核融合・核分裂という科学の域を飛び出した離れ業を用いれば元素は作り出せることが分かった。知ってたけど。
・危ないイメージがある放射性物質も特性を理解して使用すれば体内に取り入れる事で検査に仕えるという側面があることが分かった。他にもこのように放射性物質がどのように役に立ってるのか調べてみたい。
さて、いかがでしたか?
今夏はこのような感じでいくつかの宿題に取り組んでみたいと思っています。
せっかくなので、生徒の皆さんはリクエスト等は受け付けております。
次回もお楽しみに♪