※この物語はフィクションであり、実在する人物とは一切の関係がございません。
※こちらは前回のブログの解答編となっております。チャレンジしてみたい方はこちらのリンクへどうぞ。
人物紹介(色はセリフの文字)
探偵助手ジーラ
探偵助手。相槌・ツッコミ担当。
探偵ヨリック
探偵。ジーラの上司。何気に頭いい。
やらない夫警部
刑事。苦労人。本人も部下も頭を使うのは苦手。
ファニーさん
被害者。死に方がカオス。
容疑者たち
ファニーさんと同じ時間に食堂にいた容疑者たち。証言が謎解き風。今回の混乱の元凶。
1.状況の整理
「ヨリックさん。この無茶苦茶な状況で犯人って見つけられるんですか?」
「さあ?でも1つずつ解き明かしていけば真実にたどり着けるはずだよ。」
この人はこういう時ほど不敵な笑顔を見せてくる。
「じゃあまずはファニーさんの証言をまとめるとこうなるね。」
・犯人は1人だけ ・うそつきがいるが、何人が嘘をついているかは不明。 ・エイミー・ベイジル・クララ・デズモンド・アーネストの5人は信用できる。 ・犯人はファニーと同じものを食べていた。 ・オムライスを食べた人は正直者
あと、ここから証言が正しい人の発言を青で、うそを言っている人の証言を黄色で塗りつぶしていこうか。
推理メモ1
「じゃあ、容疑が晴れる早速正直者をもう数人探していこうか。まず、ネビルさんは正直者クララさんの発言からオムライスなので容疑者から外れる。で、そのネビルさんの証言からクェンティンさん・ローダさんもオムライスを食べたことになるからこの2人も容疑が晴れる。逆にクェンティンさんをうそつき呼ばわりしているオリーブさんはうそつきになるから第一の容疑者となる。あとザクシーズさんもウソをついているね。」
「え、ザクシーズさんもですか?」
「彼の発言はファニーさんがオムライスかうどんを食べたと言っているが、もしファニーさんがオムライスを食べていたら犯人もオムライスを食べていることになるから間違い。そしてうどんを食べた場合だと向かいに座ったアーネストさんがうそつきになるが、これはファニーさんのメッセージとの矛盾が出てくるのでこれも間違いになる。よって、ザクシーズさんもうそつきとなる。そして、これと同時にファニーさんも犯人も共に天丼をたべたという事が分かる。」
ヨリックさんは次々と容疑者候補を選別していく。そのうえでこの解説をするのだ。やらない夫警部も舌を巻いている。
「なるほど。では、マーカーはこれでいいか。」
「ありがとうございます。あと今回は食べたものが重要になるので証言の横に食べたものをメモっておいてください。」
「よし、じゃあこんな感じだな。」
推理メモ2
「じゃあ続けよう。クェンティンさん・ローダさんの証言を整理すると、ヴィクターさんはタイタスさんにうどんを手渡ししているから向かいの席のスーザンさんがうそつきに、ジェイムズさんとケイトさんはタイタスさんと同じものを食べていたから2人ともうどんを食べることになるからその向かいに座ったアイダさん・リーオさんもうそつきになる。」
「なるほど、じゃあこうですね!」
推理メモ3
どんどん正直者とうそつき・食べたものがあぶり出されていく。23人いた容疑者は15人まで減り、特に怪しい人物も5人に絞れている。
これなら行けそう!
と思っていたんだけれど、ここで私とやらない夫警部はまた頭を悩ませることになった。発言の真偽が分からない10人の証言のどこからとっかかればいいのか?私は顔をしかめて、やらない夫警部は集中力が切れたのかタバコをふかしている。
「あれ、もしかして2人とも手詰まり?」
ヨリックさんはもうすでに分かっているようだ。こういう時にもったいぶって黙ってしまう。
「気づいてるならもう聞かせてくださいよ。私たちは総当たりで仮説を立てまくってもう考えるのに疲れたんですから。」
「やれやれ。じゃあ、ここからも名探偵ヨリックの推理タイムと行きましょうかね。」
「いや、君に仕事の依頼をしたんだから君がやるべきだろ。常識的に考えて。」
2.偽証の裏に
「じゃあ、推理タイムの続きだ。ここからはウソをついた奴らの証言も参考にしていくぞ。」
「うその証言をですか? うそをついているなら証拠にならないんじゃないですか?」
「そうとも限らないよ。ザクシーズさんとオリーブさんは正直者との矛盾があったから追及する必要はないけど、残り3人は向かいの人がうどんを食べていたという客観的な事実からでしかうそつきを説明できていないんだ。じゃあ手始めにリーオさんの発言を使って考えてよう。『犯人は1班・2班のどこかにいる!』がウソとなるんだから、言い換えれば『1班・2班のメンバーは犯人ではない』とも言いかえれる。」
「そうか、じゃあ残りの2人の発言も反対の意味が本当になるとするなら……。アイダの発言からは『6班で天丼を食べていた人は正直者(犯人じゃない)』という事が、スーザンの発言からは『4班にうそつきは1人まで』という事が分かるのか!」
「そういう事です。そして4班のうそつきはすでにオリーブさんが出てきています。」
「だからモードさんとプルーさんの発言が正しい!これで推理がまた進みだすわ!」
推理メモ4
「とりあえずウソから出た事実には緑のマーカーを引いておこう。さて、この結果、6班にうそつきが2人いることが分かった反面、2班のジョージさん・ヘクターさんが正直者であることが分かったね。そこから、ヘクターさんから天丼を食べていることを確認されたスーザンさんの他に、3班のうそつきは天丼を食べているという内容から、アイダさん・リーオさんは天丼を食べている。これでめでたく容疑者候補筆頭の発生だね。」
「逆にうそつきが半分までの3班にいたジェイムズさんとケイトさんは正直者になりますね。」
「で、その発言が正しいとするならばウィニーさんはうどんを食べていて、5班で唯一うどんを食べていたタイタスさんはうそをついていたという事になる。」
推理メモ5
「そういう事です。で、タイタスさんの発言からザクシーズは天丼を食べておらず、さらにうそつきだからオムライスも食べていません。という事は彼の食事内容もうどんになるから、向かいにいたウィニーさんもうそつきという事になる。そして、この時点でプルーさんの『6班の半分はうそつき』の人数に到達したからウーナさんとヴィクターさんは正直者。そしてウィニーさんの発言から1~3班に犯人がいないという事ですから、アイダさんとリーオさんは無実となります。」
「という事は、犯人は……」
3.解決 そして
そこからの展開は早かった。やらない夫警部は犯人が分かるとすぐさま部下たちに指示し、浮かび上がった容疑者との街を使った追いかけっこ。港の倉庫街に追い詰めて逮捕へと至った。
推理メモ6
そう、犯人はスーザンさんだった。捕まった観念したのかスーザンさんは素直に供述を始める。
「ついカッとなってしまったんです。天丼のエビのしっぽを食べるのが大好きな私に向かって『エビのしっぽって〇キ〇リの体と成分一緒なんだってね。いやー、ゴ〇ブ〇みたいなのをおいしく食える人ってマジヤバいよね~。HAHAHA。』だなんて……。」
うわ~、確かにそれはエビのしっぽ食べない派の私でも聞きたくなかった……。
「食事中にあんなこと聞かされた私は芋けんぴを投げながらファニーを追いかけまわしていました。そして、屋上にいたときに芋けんぴが眉間に刺さってファニーは下に………。」
彼女は泣きながら謝り続けていた。
エピローグ
黄昏。事件が無事に解決し、私たちは事務所へと帰ることになった。これは後から分かったことなのでが、餡子に顔を突っ込んでいたのはたまたまそこに餡子があったかららしい。この餡子については事件性がないとの事で警察サイドでもスルーすることに決めたようだ。
「無事、解決出来ましたね。ヨリックさん、かっこよかったです。」
「探偵としてなら当然さ。」
ヨリックさんはタバコをふかしながら答えた。ここ、路上喫煙禁止なんだけどなぁ……。そんな考えを押し殺しながら私はさらにヨリックさんに尋ねた。
「そんな事より、私分からないことがあるんです。」
「なんだ?」
「ファニーさん。ぜった犯人分かってたと思いません?」
「えっ?」
「だってそうでしょ。誰がうそつきで誰が正直者かをあらかじめ分かってたかのように答えるし!」
「おい、やめろ。それは作品の都合だから。筆者の構成力の限界だから!」
「もっと言うと容疑者23人も全員分かってたでしょ。だったら最初からスーザンさんが犯人だって」
「はい終ー了ー!」