教科書の不思議 〜芥川賞は教科書に載りにくい?〜

こんにちは、LiNKS個別指導です。

秋といえば芸術の秋・スポーツの秋・食欲の秋など、様々なことに挑戦しやすい季節です。今日はその中でも「読書の秋」に注目していきます。

 

さて、皆さんは教科書を見ると「退屈だ」と感じることも多いかと思います。特に、音楽・美術・国語では毎回の教科書改訂でも「子どもたちが親しみやすいように教材を取り入れています。」などと言っている割に、何か流行りとズレているという事も多くあります。国語において流行の最先端を行くのであれば、最近の芥川賞や直木賞から選んでもいいのにと思われた方もいるのではないのでしょうか?

 

しかし、これらの賞での受賞は実はあまり教科書と相性が良くない事が多いです。

まず、それぞれの賞の傾向を確認します。

芥川賞の特徴としては大まかにいえば「新人賞」です。受賞者の傾向を見るとデビューから比較的年数の浅い作家が多く、過去20年の受賞者の平均年齢は30代となっています。そして、直木賞の特徴は「M V P」のような賞です。受賞作品は長編や単行本作品が主な作品となり、こちらの過去20年の受賞者平均年齢は45歳前後となっています。いずれにしても「その年を代表する作品」が選ばれています。

 

一方で、教科書に掲載作品を見てみましょう。京都で使用されている中学生国語の教科書である光村図書に掲載される定番作品の発表年は

中1       朝のリレー(谷川俊太郎) 1981年

トロッコ(芥川龍之介) 1923年

少年の日の思い出(ヘルマンヘッセ) 1904年

中2        走れメロス(太宰治) 1940年

字のないはがき(向田邦子) 1983年

中3        高瀬舟(森鴎外) 1916年

握手(井上ひさし) 1982年

故郷(魯迅) 1921年

とこのように多くの作品が40〜100年以上が経過している事が多いです。これは教科書の評価軸が「時代を超えて読み継がれる普遍性」と「文学史の中で高い評価を受けていること」が関係してきます。

どれだけ時代が変わっても、「少年の日の思い出」にあるような嫉妬や後悔の悲しさも、「走れメロス」にあるような友情と信じる心の美しさも、「高瀬舟」にあるような正義と幸福への問いも、決して廃れることがありません。これらの作品は、その年の流行といった芥川・直木賞とは一線を画すと言える、いわば文学界における「殿堂入り作品」と捉えることができます。

 

芥川賞・直木賞に選定される作品は、時代性が高い事もあり、共感できる点も多く読みやすいと感じる事も多いかと思います。しかし、教科書の役割は、流行を追うことではありません。編集者が読んでいく生徒たちの読解力・感受性に合わせて1つ1つの作品を選定しています。時代を超えた普遍的テーマに注目しながら、もう一度教科書を開いてはいかがでしょうか?